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December 10, 2006

「大山倍達正伝」

오오야마 마스타쯔 정전

新潮社 小島一志・塚本佳子著。

漫画「空手バカ一代」を読んで感動のあまり、極真会に入門したことのある人が身近にいるが、大山倍達館長(当時)には特徴のあるなまりがあったそうだ。たとえば「駄目よ」が「タメよ」になるだとか、朝鮮半島出身の人特有なものなのだが、その人は館長が韓国人だとは思いもしなかったそうだ。「空手バカ一代」がすべて実話だと思い込んでいたから。私も「この男は実在する」と冒頭書かれた漫画の内容がすべて事実だと、永いこと思い込んでいたので、朝鮮半島出身と知ったときはかなり驚いた。

「大山倍達正伝」は5年以上に及ぶ研究・取材により真実の大山倍達像を浮かび上がらせようとした労作である。
それは大山氏自らが著作などに描いた「大山倍達伝説」とも、韓国の「風のファイター」などで描かれた「チェ・ペダル」の姿とも違うものだ。

塚本氏の筆による第一部「人間・崔永宜」と、小島氏による第二部「空手家・大山倍達」に分かれているが、特に大山の生涯を書いた第一部が面白い。

全羅北道の裕福な家庭に育った崔永宜(本名)が密航で日本に渡る。それからの彼は在日朝鮮人の民族運動に深く関わることになる。大山の歴史を読み解くことはすなわち在日朝鮮人の歴史を知ることにもなるわけで、特にマス・オーヤマに興味がなくとも、読む意義のある内容になっている。とは言え、大山は民族運動をしていたとは言っても、それほど愛国的ではなかったのだそうで、民族運動より空手修行に没頭していたという。

日本名の「倍達」は朝鮮半島を意味する言葉で、彼の恩人とも言うべき人物がつけたそうだが、大山自身は「倍達」の意味を永いこと知らずにいたそうだ。これは意外だった。同胞たちにはシークレットメッセージのようになっていた名前だったが、本人は日本人の仮面をすっかり被った気になっていたということらしい。

もっとも後年は朝鮮半島出身ということを隠すこともなくなり、韓国にも頻繁に渡っていたそうだ。大山の死後、日本以外に韓国にも家庭があったことが明らかになったが、戸籍上は韓国の家族も正式な親族である、というか韓国のほうが正統であるといえる。

というのは日本の大山倍達の戸籍は、終戦直後に作成した偽造の朝鮮戸籍(在日朝鮮人が簡単に戸籍が作れた時期があった)から帰化して作ったもの。それとは別に、韓国では出生したときからのもともとの正式な戸籍がずっと残っており、日本に帰化した証拠すら存在していないという。


第二部は、極真会に入門し、大山と親交があった小島氏が書いただけに、大山倍達の人となりが生き生きと描かれている。漫画でおなじみの山籠りやアメリカ遠征、牛との戦いの真相が興味深い。空手の歴史も書かれている。

思い出したが、ずーっと前のテレビ東京あたりのバラエティ番組で、大山倍達とあっち向いてホイをするというくだらないことをしていたが、それにちゃんと応じていたよなあ。同じ番組でだんご屋のおばさんにタンゴを踊らせるということもしていた。ひー、くだらない(がこういうの結構好き)。


とにかく多少なりとも大山倍達に興味のある人には面白い本ではないだろうか。韓国でも翻訳出版されればいいと思う。それとももう誰かやってるかな?


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